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2025.05.08UP

【精肉店の勝ち残り戦略】焼肉店が閉じた分だけ、家で焼肉する人が増えている|食肉業界専門経営コンサルタントのブログ(2025.05.08)

吉田 圭良

吉田 圭良

コンサルティング事業部 食肉業界支援チーム
チームリーダー
シニアコンサルタント

Blog | Keisuke Yoshida

― 焼肉店が閉じた分だけ、家で焼肉する人が増えている ―

2024年、焼肉店の閉店が“過去最多”に
東京商工リサーチは、
「2024年度(速報)の倒産(負債1,000万円以上)は、50件(前年比61.2%増)と大幅に増加。2008年度以降で、過去最多だった食中毒問題が起きた2012年度の33件を大幅に上回った」

と発表。

https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1201225_1527.html

 

報道に挙げられている以外に、我々が業界内でよく聞く内容も踏まえると、主な要因として以下が挙げられます。

  • 人件費・原価の高騰により採算が合わなくなった
  • 人材不足による営業時間短縮やサービス低下により顧客不満を招いた
  • インフレ下での「外食控え」+「内食回帰」が伸長した
  • 都市部での家賃高騰や再開発による立ち退きが進行した
  • MR向けの高級弁当や接待など高単価客も、経費にシビアな企業が増え注文が減少した

 

 

一方で、“家焼肉”市場は拡大中
焼肉店の閉鎖は食肉業界にとってネガティブなニュースですが、
その需要が“家庭消費”にシフトしているというデータも明確に出ています。

     

    • ホットプレート・卓上ガスコンロの売上も増加傾向(=自宅焼肉の証)

    グローバルインフォメーションの調査によると、ホットプレートの世界市場は、2023年に11億米ドルの評価額に達し、2024~2032年までCAGR 5.5%で成長すると予測されています。

    またPRTimesに投稿された株式会社くふうカンパニーHDのリリースによれば、「普段自宅で焼肉をする人は6割以上」とされています。
    https://www.gii.co.jp/report/gmi1621918-hot-plates-market-opportunity-growth-drivers.html

    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000407.000046400.html

     

    • 精肉店での「焼肉用カット肉」「味付き肉」売上が前年比+12~18%増

    公益社団法人日本食肉協議会の報告書によれば、焼肉用カット肉の売上は増加傾向にあり、これらのことからも明らかに「焼肉店」→「精肉店」+「家庭調理」にシフトしていることがうかがえます。

     

    • ネットでの「お取り寄せ焼肉セット」も同様に伸長中

    我々のご支援先様におけるネットショップでも「焼肉」関連の商品は人気カテゴリーのひとつ。「店長おまかせ焼肉セット」といった、予算と容量(〇人前)を固定して、中身内容は店の在庫や原価評価をコントロールしながら店舗側で決めて提案するスタイルが基本で、コスパの高さが喜ばれています。

    以前私がリリースしたニュースへ一般の方から寄せられたコメントには、「焼肉店に行っても結局は自分で焼くのだから、精肉店で良い肉を買って家で焼いた方がコスパ高い」というコメントがあり、多くの「いいね!」が寄せられていました。

     

    今、精肉店にとって“絶好の追い風”である理由
    焼肉店が閉じていく中でも、お客様が焼肉を食べなくなるわけではありません。

    「家で手軽においしい焼肉をしたい」

    「専門店の肉で焼肉したい」

    「味付き・カット済みなどで簡単に済ませたい」

    …というニーズを持ち、その充足方法として「精肉店の利用」を選択しているのです。

     

    これらを満たせるのは、精肉専門店ならではの商品力・提案力・信頼感です。

     

    今、精肉店が取るべき3つの戦略アクション

    ✅「家焼肉セット」を定番化する

    • 価格帯別(1,500円/2,980円/5,000円)のファミリー向け・2人用・ギフト向けで商品化
    • 希少部位も「少量盛り合わせ」で提案しやすくする
    • タレ付き、味付きの簡便性も強化

    専門店の価値の一つは「好きなものを好きなだけ買える」という計量販売方式にありますが、それだけではありません。

    上記のような「専門店で良いものを買いたい」というシンプルなニーズをシンプルに満たすことを目指せば「焼肉盛り合わせ」といった商品は有効です。

    一見すればあたかも量販店戦略のようでもありますが、顧客にとって、「何を買うか」以上に「どこから買うか」という点での高い価値を発揮できる専門店であればその点を差別化ポイントとして十分に戦うことができます。

     

    ✅焼肉提案POPと売場設計を“明日焼ける”仕様に

    • 「このままホットプレートで!」「今日は家で焼肉しませんか?」といったシズル感のある販促
    • カット方法・焼き方・食べ方など、店員の提案が活きる売場づくり

    とある人気精肉店では「木曜日は焼くだけキャンペーン」として、店舗で「仕事終わりです」と声を掛ければ焼くだけ商品が2割引きで買えるというキャンペーンを展開しています。こうした消費者の生活に寄り添った提案は、地域密着型専門店の重要な取り組みといえます。

     

    ✅惣菜・EC・LINE販促と連動した“焼肉強化月間”を設ける

    • 焼肉に合う「ナムルセット」「キムチ」「ごはん大盛り弁当」なども連携販売
    • 公式LINEで「焼肉の日特集」「父の日焼肉ギフト」「今週のおすすめ部位」などの情報発信
    • ECでは「お取り寄せ焼肉」ページを常設して定期訴求

    現代の顧客は様々な角度から情報を得て、常に比較検討しながら購買最適化を図っています。

    このようなWEB・EC・SNSを活用した多角的な情報発信も、実店舗を盛り上げるうえで欠かせないものとなっています。

    実際私の関係先でも、「ネットでみて来店」「来店してネットで購入」といったクロスチャネル購買は盛んにおこなわれていることが観測されています。

     

    「お店で食べられないから、専門店で買う」が当たり前になる時代へ

    焼肉店の減少は“消費の終わり”ではなく“流通の変化”です。
    焼肉需要そのものが減っているわけではありません。

    その証拠に、

    • 自宅で焼肉をする人はむしろ増加
    • 「お店では頼めなかった部位を自宅で食べる」人が増加中
    • 家族で焼肉をすることで、体験価値も一緒に提供される

    ということが起こっていますね。

    この時代の変化を捉え、“精肉店こそが焼肉文化の継承者”という自負をもって打ち出していきましょう。

     

    もう待ったなしです。今年を変革元年にしましょう。

    ✅ 焼肉店の閉鎖は、精肉店にとっての「新しい入り口」
    ✅ 家庭消費に対応した商品・販促を、定番戦略に組み込む時期が来ています
    ✅ “焼肉といえばあの店”というポジションを築くには、今こそチャンス!

    吉田 圭良

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