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2025.06.03UP

【食肉業界経営者向け】業界動向速報-東伯ミート、累積赤字解消困難で7月末に清算へ-(2025/06/03)

吉田 圭良

吉田 圭良

コンサルティンググループ 食肉業界支援チーム
チームリーダー
シニアコンサルタント

Blog | Keisuke Yoshida

皆様おはようございます。

本日(2025年6月3日)は、凄惨なニュースが飛び込んでまいりました。

 

-東伯ミート、累積赤字解消困難で7月末に清算へ-

 

鳥取県琴浦町に本社を置くJAグループ傘下の食肉加工会社「鳥取東伯ミート株式会社」が、2025年7月末をもって会社を清算する方向で協議していることが明らかになりました。累積赤字の解消が困難と判断したためで、7月末に予定している株主総会で正式決定される見通しです。

東伯ミートは、牛肉などの加工・販売・卸売りを手がけており、地域の食肉供給に貢献してきました。

しかし、近年は原材料費や光熱費の高騰競争激化などにより業績が悪化し、事業継続が困難な状況に陥っていました。

関連団体のJA鳥取中央によりますと、ここ数年は原材料や家畜のえさ代、燃料代が値上がりし業績が悪化。昨年度はかろうじて黒字でしたが1億円の累積赤字の解消にはつながらず、今後数年以内に業績を回復させることは困難だと判断し、7月末を目処に会社を清算する方向で話が進んでいるということです。

日テレNEWS NNN+1ja-tottorichuou.or.jp+1

現在、事業の引継ぎなども視野に交渉している会社もあるということで、従業員に関しては希望があれば同じグループ内のJA鳥取中央での雇用もしくは引継ぎ先で雇用ができないか調整しているということです。

日テレNEWS NNN

東伯ミートは日本海テレビの取材に対し「清算する事実はある」としています。

日テレNEWS NNN

-鳥取東伯ミート株式会社概要(企業HPより引用)-

名称 鳥取東伯ミート株式会社
設立 平成19年1月4日
代表者 代表取締役社長 戸田 勲
本社所在地 鳥取県東伯郡琴浦町逢束806番地
電話番号(代表) 0858-27-1529
電話番号(営業部) 0858-52-2983
FAX番号(代表) 0858-27-1539
FAX番号(営業部) 0858-53-1949
資本金 2,000万円
従業員 70名 
業務内容
  • 食肉処理業
  • 食肉製品製造業
  • 食品の冷凍または冷蔵業
認定取得
  • 鳥取県 HACCP適合施設
関連団体

 

 

-鳥取東伯ミート株式会社の特徴-

とっとり中部発信プロジェクトの中で、鳥取東伯ミート株式会社様は下記のように企業の強みを語っておられました。

 

“鳥取県産”という、こだわり
 当社の加工品は、「鳥取県産の原料肉」を使用しています。「ハムステーキ」「ベーコンブロック」「焼豚」も同様です。加工品でお肉の原産地を確認される方もいらっしゃると思いますが、輸入品が意外に多いんですね。そんな中で国産、ひいては鳥取県産にこだわっているのは当社だけだと思います。これはすごい強みだと思っています。

お肉は大山町にある屠畜場を通じて入ってきます。当社は大山町から近く、車でおよそ30分という場所なので、新鮮な状態でお肉を仕入れることができます。その肉を鮮度のいい状態で温度管理し、枝肉から部分肉に成型、そのまま加工工程まで、全て社内で対応できる設備があります。社内一貫で、仕入→加工→出荷までできますし、直販店舗もありますので、徹底した販売・品質管理が可能です。

大きくはばたく商品に 鳥取東伯ミート 株式会社

 

-鳥取東伯ミート株式会社の業績-

鳥取中央農業協同組合の「業務のご報告」によれば、鳥取東伯ミート株式会社様の令和1年度~令和5年度までの業績推移は以下の通り。(令和4年度はデータなし)

(令和5年度)

売上高 2,086,885 千円

経常利益 △ 20,574 千円

当期純利益 △ 17,569 千円

鳥取中央農業協同組合「令和5年度業務のご報告」

 

(令和3年度)

売上高 1,995,730 千円

経常利益 △ 57,324 千円

当期純利益 △ 59,947 千円

鳥取中央農業協同組合「令和3年度業務のご報告」

 

(令和2年度)

売上高 2,358,137 千円

経常利益 △ 54,650 千円

当期純利益 △ 34,920 千円

鳥取中央農業協同組合「令和2年度業務のご報告」

 

(令和1年度)

売上高 2,428,513 千円

経常利益 3,031 千円

当期純利益 5,496 千円

鳥取中央農業協同組合「令和1年度業務のご報告」

(グラフはリライズコンサルティング(株)にて作成)

 

-食肉業界経営コンサルタントの視点-

 

■累積赤字が拡大した3つの要因(推察)

1. 粗利率の低下・原価上昇圧力
R1〜R5のなかで経常利益はR2以降すべて赤字(令和4年は不明)。

と畜・加工事業においては、原材料価格の高騰(特に飼料・燃料費)が直撃。

JAグループ系のため価格転嫁に慎重で、販売価格に上乗せしきれなかった可能性が高い。

 

2. 固定費の圧迫と売上減少
R3に売上が約4億円近くまで落ち込み、その後も回復せず。

設備維持・人件費などの固定費が経営を圧迫し、赤字が恒常化。

 

3. 戦略的転換の遅れ
地元JAの支援体制はあったものの、製造・販売体制の再編や新商品開発などへの投資が困難。

消費者の嗜好変化や販路多様化(EC・直販・外食向け)への対応に遅れがあった可能性。

 

■令和5年度に「一時黒字化」も不十分

報道によれば、令和5年度には事業調整により「かろうじて黒字」とする一方、
最終的な当期純利益は1,700万円超の赤字に着地。累積赤字は約1億円以上とされており、
これ以上の債務超過を回避するためにも「清算」という判断がなされたものとみられます。

 

■今後への示唆:中小・地域型の食肉加工業者が生き残るには?

今回のケースから、中小規模の加工業者が直面するリスクが明確になりました。

リスク 対応のヒント
原価高騰 加工度・付加価値を高めた商品化(例:惣菜・ブランド加工肉)
販売チャネルの制限 直販・EC販売・地域連携(ふるさと納税・道の駅等)の強化
経営管理の脆弱性 事業計画・収支シミュレーション・資金繰りの見直し

 

■まとめ

東伯ミートの清算は、地域農協系企業においても「黒字化の見通しが立たなければ、早期の撤退判断が必要」となることを示す象徴的な事例でもあります。
まずは原材料高・人件費上昇などの「コスト構造変化」に対応するための、「直販ビジネスや高付加価値製品の導入による事業構造・収益構造の改革」が、生き残りのカギとなります!

吉田 圭良

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