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2025.05.07UP

【精肉店の勝ち残り戦略】なぜ精肉店より鮮魚店の方が多いのか?生き残り鮮魚店から学べること|食肉業界専門経営コンサルタントのブログ(2025.05.07)

吉田 圭良

吉田 圭良

コンサルティング事業部 食肉業界支援チーム
チームリーダー
シニアコンサルタント

Blog | Keisuke Yoshida

食肉業界の明るい未来は、人類が「代替肉(plant based meat、meat substitute)」という概念・言葉を生み出し技術向上の努力を始めた時に、確固たるものになりました。

それほど「(万が一畜肉が食べられない将来が来たとしても)肉を食べたい」という強い渇望があることを示しているからです。

「水産資源の枯渇」も業界では懸念されている重大なテーマですが、「未利用魚の活用」といった取り組みが盛んになる程度であり、「代替魚」などという概念は現時点で世界中どこを探しても生まれてはいないでしょう。

 

それほど人類は、他のどの食材も及ばない強さの欲求を「肉」に対して持ち続けているのです。

 

一方で、最新の経済センサスによれば、

「精肉店」が全国でおよそ11,600店舗あるのに対し、「鮮魚店」はおよそ14,200店舗あり、鮮魚店の方が多いのです。

これほど「肉食化」「魚離れ」が叫ばれる中で、なぜこのような事が起こっているのでしょうか?

 

― 「魚離れ」でも生き残る鮮魚店から、精肉店が学ぶべきこと ―

 

精肉店と鮮魚店の「人口1000人あたり店舗数」比較
以下は、総務省商業統計(2021年)および都道府県別人口データに基づく推計です。

店舗種別 推定全国店舗数 1000人あたり店舗数(概算)
精肉店(食肉小売業) 約11,600店 0.093店/1000人
鮮魚店(鮮魚小売業) 約14,200店 0.114店/1000人

※参考:人口1億2300万人前後に対して計算
※スーパーマーケット内の店舗は除外した「専門店」のみを対象

 

人口比では「鮮魚店>精肉店」という結果に

これは「魚離れ」が叫ばれる中で意外な事実と言えるでしょう。

 

なぜ“魚離れ”の中でも鮮魚店は生き残っているのか?

一見すると「時代遅れ」のように見える鮮魚店ですが、実は以下の3つの強みによって、一定数が安定経営を維持しています。

 

✅「刺身」=“買うしかない”商品を持っている

魚は家庭でさばく人が激減しており、刺身や三枚おろしは“お店でしか手に入らない”存在になっています。

この「家庭でつくれない商品」を軸に生き残っている鮮魚店が多い。

👉 精肉では「ステーキ」「焼肉」は家庭で再現しやすいため、“家庭でできない商品軸”が鮮魚店と比べては不足しがちな傾向にあります。

 

✅顔が見える販売で“買うハードル”を下げている

魚は品種・調理法が複雑で、初見では選びにくい商品。

鮮魚店では**「今日のおすすめ」や「調理法のアドバイス」**が対面で行われており、情報提供による安心感が差別化要因に。

👉 精肉店でも同様の状況(銘柄牛・部位の多様化)があるにもかかわらず、説明をPOPに頼りすぎて“選べない店”になっているケースが多い。

 

✅スーパーとの「非価格競争」に成功している

スーパーで安価な切り身魚を販売する中、鮮魚店は「天然」「地元水揚げ」「朝どれ」などストーリー性のある商品に特化。

また、少量パック・味付け加工・お弁当とのセット販売など、単品売り以外の工夫で利便性を提供。

👉 精肉店は「量が多い」「味付けなし」「塊肉」など、使いづらい・情報不足な売場構成が多く、比較されると不利になりやすい。

 

精肉店が“鮮魚店の生き残り”から学ぶべき3つの視点

🔶「家庭でつくれない商品」を育てる

魚の刺身のように、「手間がかかるからこそ買いたい」商品を育てることが鍵です。

たとえば:

特製ローストビーフ(低温調理+タレ付き)

極厚ステーキの焼き方付きパック

ブランド和牛の「すき焼きキット」など

👉 “プロの技術”を価値として売る仕組みが重要です。

 

🔶「選びやすさ」への人のサポート強化

鮮魚店のように、「今日何がうまいか」「どう食べるか」を“人の言葉”で伝えることが差別化要素に。

そのためには:

接客要員の配置と教育

「おすすめ提案」の役割を明確にしたスタッフ育成

👉 「商品」ではなく「人」を看板にする発想が専門店らしさです。

 

🔶「差別化=高級」ではない。“使いやすさ”を競え

鮮魚店は“天然物”だけでなく、「骨取り」「味付き」「焼くだけ」など生活に寄り添う工夫で生き残っています。

精肉でも:

味付き肉セット

部位ごとのレシピ同封

お弁当や惣菜との組み合わせ提案

👉 差別化は「高価」ではなく、「便利」「わかりやすい」によって実現できる。

 

もう待ったなしです。今年を変革元年にしましょう。

✅ 精肉店は「魚離れ」に甘えてはならない
✅ 鮮魚店の生き残り方には、「接客・便利さ・プロの技術の見える化」など多くのヒントがある
✅ “家庭でできない価値”を商品化し、“選びやすい工夫”を人が担うことで、選ばれる専門店に

これからの時代、専門店の価値とは「商品の希少性」ではなく「体験の特別性」です。
鮮魚店の強みを参考に、精肉店ならではの価値の打ち出し方を再設計していきましょう。

吉田 圭良

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コンサルティング事業部 食肉業界支援チーム
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