2025.05.09UP
【精肉店の勝ち残り戦略】「精肉店直営飲食店」の可能性を探る|食肉業界専門経営コンサルタントのブログ(2025.05.09)
*Googleにおける「精肉店」関連ニュース検索結果(2025年5月9日AM6:38時点)
昨日のブログでは「焼肉店の閉鎖」と「精肉店における焼肉需要の追い風」について記述しました。
一方で今、上図のように「精肉店直営飲食店」のOPENが立て続いていることも見逃せませんね。
目次
― なぜいま、“精肉店×飲食店”が急増しているのか? ―
ここのところ、特に関西圏で精肉店が運営する焼肉店・肉バル・ステーキ業態などが急増しています。
堺・枚方・神戸・奈良など、郊外エリアでも続々と出店が見られ、
「町の肉屋さんが飲食をやっている」というケースはすでに珍しくなくなっています。
なぜ今、関西で「精肉店×飲食店」が増えているのか?
とくに関西圏には以下のような背景的要因があります。
✅「飲食文化」と「直営志向」の地盤がある
- 焼肉・串カツ・ホルモンなど“大衆的な肉外食文化”が根強い関西エリア
- 生産者や精肉店と“近い距離”で営業する飲食店が多く、直営の親和性が高い
✅食肉卸・小売だけでは“収益が鈍化”してきている
- スーパーとの価格競争
- ECへのシフト
- 卸取引の値下げ圧力
→ 結果として、「利益を自社で最後まで取りに行く」直販型モデルが重要になっている!
✅コロナ後の「近場消費・肉ブーム」への対応
- 「遠出しない外食」「近場で気軽に焼肉」需要が復活
- 精肉直営だからこそできる“肉質の割に安い”体験が刺さっている
→ だからこそ精肉店の未来は明るい!
精肉店が飲食店を経営するメリット
✅メリット①:「高粗利」ビジネスで利益が取りやすい
- 精肉卸や小売では粗利25〜35%が一般的 → 飲食なら原価率30%以下が一般的
- 肉原料の"仕入れ力"&"食シーンに近いサービス力"を活かせるのは精肉店ならでは
→ 当然ながら産地に近い方が「仕入れ価格」の面では優位性を持つわけですが、「食べておいしいお肉の目利き・仕入れ・自由選択」「食べることを考えた最終加工」という点では消費者に近い精肉店に分がありますね!
✅メリット②:「ブランド構築」に直結する
- 「〇〇精肉店直営の焼肉屋」という看板が専門性・安心感・こだわり感を伝えるブランディング要素に
- 飲食の評価が精肉販売・惣菜販売にも波及(「あの味が家でも買える」)
✅メリット③:「在庫処理の受け皿」になる
売れ残り・余剰在庫・規格外品などを惣菜・焼肉で使い切れるため、ロス削減にも貢献
“歩留まり対策”として有効活用できるのは加工を自社で担える強み
→こうしたチャネルを持つことで肉の仕入形態を拡大することができ、原価を抑えることにもつながる!
逆に、精肉店が飲食を始めるリスク・デメリット
✅デメリット①:人手が足りない(=別業界の人材が必要)
- 飲食は「土日・夜営業・接客力」が求められる業種
- 精肉加工と求められる人材が異なり、現場の労務がひっ迫することも
→ ただし、「精肉店スタッフ」としての採用よりも「飲食店スタッフ」としての採用の方が難易度は低い現状も。
✅デメリット②:オペレーションの難易度が高い
- 原材料はあっても、調理・接客・衛生・シフトなどの飲食特有のノウハウが必要
- 特に「味の安定性」「回転率の管理」「客単価コントロール」などがカギ
→ ここは専門家を入れ、設計段階から丁寧にすすめていきたいところ!
✅デメリット③:イニシャル投資&撤退リスク
- 開業資金(厨房・客席・許認可など)で初期投資1,500〜3,000万円超も珍しくない
- 飲食店は閉店率も高く、撤退時の負債・赤字リスクが大きい
→ これが最も心配されるところ。多くの精肉店にとって失敗は許されない事業となるでしょう。「利益を自社で最後まで取りに行く」直販型モデルとして飲食業態以外にEC(ネットショップ)業態をもつ、という選択もあり!
始めるなら“低リスク・回転型”の小型モデルから
モデル | 特徴 | 例 |
---|---|---|
惣菜+イートイン | 販売メインに軽飲食スペースを併設 | ハンバーグ・ローストビーフ丼など |
テイクアウト専門 | 店舗投資を最小限に抑えやすい | 弁当・焼肉セット・揚げ物など |
土日限定飲食 | 平日は加工・土日は店舗営業 | 「週末だけの肉バル」なども話題性あり |
もう待ったなしです。今年を変革元年にしましょう。
✅ 肉のプロだからこそ提供できる“味と価格のバランス”
✅ ただ肉を売るだけではなく“体験を売る”発想への転換
✅ 飲食店という看板は、精肉店のブランディングと収益化の新しい武器になる
「やる or やらない」ではなく、「どう始めるか」に焦点を置くことが重要です。
まずは“惣菜・弁当からの小規模飲食チャレンジ”から、未来の布石を打ってみてはいかがでしょうか?