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2025.04.21UP

【精肉店の勝ち残り戦略】マクドナルドに学ぶ「接客人材」の経営効果|食肉業界専門経営コンサルタントのブログ(2025.04.18) #2

吉田 圭良

吉田 圭良

コンサルティング事業部 食肉業界支援チーム
チームリーダー
シニアコンサルタント

Blog | Keisuke Yoshida

陳列よりも“人”で売る時代へ。マクドナルドに学ぶ「接客人材」の経営効果

最近、スーパーや業務用量販店の売り場を見ると、

「多くの精肉店とは逆の価格バランスでの値付け」を見ることが増えてきました。

たとえば、

  • OKストアでは、カルビ材が799円/100g、イチボステーキが599円/100g

  • 業務スーパーでは、肩ロース焼肉パックにザブトンを混ぜて598円/100g(バランスよく混ぜているわけではない)。ザブトン単体の販売はナシ

量販店がこのような部位混合・価格逆転の戦略をとる背景には、“売れる・動く”ことを最優先にしている考え方があります。

  • イチボやランプなど「ステーキっぽい名称の赤身」=安価で大量陳列

  • サシの多いカルビ系部位=希少性を強調して高値をつける

つまり、実際の「味」や「希少性」よりも、“売れる見た目・売れる言葉”で価格をつけているのです。

こうした量販店との差別化が求められる精肉店にとって、

「細分化した専門的部位を陳列する」「POPを充実させてわかりやすくする」「売場を整えて選びやすくする」

といった取り組みは、必要ですが十分ではなくなってきているのです。

専門店が今とくに強化すべきなのは、“人による説明と提案”

つまり、接客に特化した人材の配置です。

今の時代、食品小売・外食産業においてその有効性を証明する代表的な事例が、マクドナルドの「おもてなしクルー」導入です。


マクドナルドに見る「接客専任人材」の効果

2019年から日本マクドナルドが全国で導入した「おもてなしクルー(おもてなしリーダー)」は、

接客に特化したスタッフとして、客席・カウンター周辺で顧客のサポートを行う役職です。

目的は、“ただの商品提供”ではなく、来店から退店までの心地よい体験の提供

  • 注文補助・商品案内・声がけなどにより、店舗全体の印象を向上

  • ファミリー層や高齢者に「安心して使える店」という印象を強化

 

(参考サイト:【公式】マクドナルド専門職クルー採用サイト アルバイト・パート求人情報

 

 

“接客スタッフ”導入初年度の経営指標

おもてなしクルーの本格展開が始まった2019年、コロナ禍での外食産業の落ち込みが起こる一方で、店内滞在時間の短さやデリバリーの浸透などの後押しも受けて、マクドナルドの業績が過去最高を記録した年です。

指標 前年比(2019年)
全店売上高 +4.8%増(5,490億円/過去最高)
既存店売上高 +4.5%増
客数 +2.4%増
客単価 +2.0%増
営業利益 +11.9%増(過去最高益)

▶“接客スタッフ”導入の背景

おもてなしクルー導入の背景には、マクドナルドが目指す「未来型店舗体験」戦略がありました。

この戦略では、デジタル技術の活用と並行して“人のぬくもり”や“ホスピタリティ”の強化に重点が置かれました。

具体的には、「おもてなしリーダー」「テーブルデリバリー」「モバイルオーダー」の3つの新サービスを通じて、多様化する顧客ニーズに応え、これまでにない快適さとおもてなしを提供することが目的とされています。

これによりクイックサービスレストランのサービス概念を大きく変革し、来店客一人ひとりに充実した体験を届けることを目指していました。

(参考サイト:​mcdonalds.co.jp、​gaisyoku.biz

 

 

精肉店に応用すべきポイント

精肉店でも、量販店との差別化を「商品」「陳列」といった『木』ではなく、顧客の"買い物体験"という『森』から考える必要があります。

「この部位はどう食べる?」「今日は焼肉?すき焼き?」といった顧客の買い物体験をダイレクトに高める人材が必要です。

POPやチラシでは伝えきれない価値を、

「伝える力」「聞く力」「寄り添う姿勢」をもつ人材が補完することで、単価も満足度も向上します。

▶たとえば…

  • 「ザブトンって、どこの部位ですか?」と聞かれたら、「肩ロースの中でも一番やわらかい部分ですよ」と一言添える

  • 「今晩焼肉にしたいけど、脂っこくないのはどれ?」という質問に、ランプやイチボを提案する

  • 「これってどう焼いたらいいですか?」と聞かれたとき、焼き方とタレの種類まで案内する

  • そもそもお客様から「すみません」と声を掛けられる前に、「今日は暑くなってきたから火を使うの面倒ですよね」などこちらから声をかけてニーズを探る・生み出す

このように、「部位の背景・味わい・調理法・おすすめの使い方」まで“売場を生きた情報空間に変える”存在が必要なのです。

陳列戦略は“接客を前提に設計する”時代へ

今までは「陳列を工夫して売る」だった時代から、

これからは「1to1の接客を前提に、陳列を考える」時代へ移っています。

  • POPは“話しかけるきっかけ”に過ぎない

  • 陳列は“接客をスムーズにするための補助機能”

  • 量販店より高い値付けは“専門的な接客があってこそ納得される情報”

「接客専門職」としての採用はカンタン!閑散時間だけの特別サービスとして既存人員の活用もあり!

このような取り組みを実行・成功させるにも、多くの精肉店にとって悩ましいのは現在の人手不足でしょう。

ただ、「お肉を切るのは難しい」「人と話すのは好きだが単純作業のレジ打ちなどは好きではない」

そう考える人は少なくありません。

 

さらにいきなりすべての日、すべての時間の導入でなくても、

1週間の中で最も閑散とする曜日・時間に絞って、カウンターの外に立つスタッフを配置するというところから始めても構いません。

 

出来ない理由をひとつずつ潰していきながら、時流に合った店づくりで業績を伸ばしていきましょう。

もう待ったなしです。今年を変革元年にしましょう。

✅ 精肉店も“売場体験”が差別化の時代へ

✅ 陳列やPOPに投資するなら、“接客の人材”にも同じくらい投資を

✅ 一人の「おもてなし人材」が、あなたの店の記憶に残る理由になります

まずは週末・繁忙帯だけでも、「説明係」を配置してみませんか?

“POPでは売れない商品”が動き出す、そのきっかけになるはずです。

吉田 圭良

吉田 圭良

コンサルティング事業部 食肉業界支援チーム
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