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2025.05.20UP

【精肉店の勝ち残り戦略】町の精肉店が冷凍対応に直面する3つの壁|食肉業界専門経営コンサルタントのブログ(2025.05.20)

吉田 圭良

吉田 圭良

コンサルティンググループ 食肉業界支援チーム
チームリーダー
シニアコンサルタント

Blog | Keisuke Yoshida

― 冷凍対応できる店だけが、広域で戦える時代へ ―

さて、突然ですが、皆様の精肉店では「冷凍物流」に対応できていますか?

とある県の食肉小売事業協同組合にて理事長と情報交換させていただいた際、

急速冷凍機や真空包装機の用意がある加盟店がどれくらいいるか?というご質問をさせて頂いたところ、

「10%くらいじゃないかな・・・?」というお返事がありました。

改めて皆様に強調してお伝えしたいのは、

今勢いのある精肉店、今後も生き残り続けられる精肉店は、これらを持っている!ということです。

【1】なぜ今、「冷凍物流対応」が必須なのか?

かつて精肉店界隈では、売上を上げるために「冷蔵ショーケースが必須」と言われた時代がありました。

精肉店において「売上を上げるために冷蔵ショーケースが必須」とされるようになったのは、高度経済成長期の1960年代後半〜1970年代前半ごろが大きな転換点と考えられます。

以下、その背景を時代別に整理します。

■ 戦後直後〜1950年代:「対面販売・常温陳列」が主流

  • 精肉は主にブロック肉の対面販売が中心。

  • 冷蔵庫がまだ高価で普及率が低く、店舗にも冷蔵設備が少なかった

  • 保健所の指導や衛生基準も現在ほど厳しくなかったため、常温や氷冷陳列が行われていた。

 

■ 1960〜70年代:「冷蔵ショーケース=販売の信頼性向上」が広がる

  • 冷蔵ショーケースの普及とともに、衛生意識が向上

  • 消費者の「見て選びたい」ニーズが強まり、パック販売やセルフ選択式の陳列が広がる。

  • 同時に、保健所の指導強化や「清潔さ」が店の評価軸になり始め、ショーケースの導入が加速。

 

■ 1980年代以降:「量販店型陳列=売上拡大ツール」として確立

  • スーパーや量販店が急拡大し、精肉売場=冷蔵ショーケースが当たり前の時代へ。

  • 精肉専門店も、視認性・衛生面・効率性を考慮して冷蔵ショーケースを前提とした陳列へ転換。

  • この時期から「ショーケースに入れていない=売れない」という感覚が定着。

 

こうした流れを経て、今は下記のような背景とともに、「冷凍」の重要性が高まっているのです。

 

背景 内容
EC需要の高まり 店頭販売に加えて「ネットで買いたい」ニーズが急増。特に贈答・遠方リピーター層に冷凍対応が求められる
地域を越えた商圏開拓 常連の家族・友人への贈り物、SNSやLINE経由で広がる紹介など、商圏が地域外に広がる中で冷凍対応が必須
食品ロス削減と作業平準化 惣菜や精肉のロス軽減、作業の“まとめ仕込み・冷凍保存”ができることで業務効率も向上

【2】町の精肉店が冷凍対応に直面する3つの壁

ただし、町の精肉店が冷凍対応する際にはいくつかの問題が生じています。

 

❌ 専用機材がない(冷凍庫・真空包装・急速冷凍機など)

  • 店舗設備が「冷蔵」中心で、急速冷凍ができない・冷凍保管スペースがない

  • 結果として、「冷凍肉=家庭の冷凍庫でカチカチになった肉」と同じ品質に見られてしまうリスク

 

❌ 冷凍商品設計のノウハウが不足

  • 「どの商品をどう冷凍すれば良いか」「冷凍後の食味や調理性」など、レシピとパッケージ設計が難しい

  • 肉の色変化・ドリップ問題・風味劣化などでクレームの原因にも

 

❌ 物流コストが割高(特に低ロット配送)

  • クール便は1件あたり1,000〜1,400円前後。単価が低いと利益が出にくい構造

  • 特に地方店舗では「都心までの発送コスト」が高くつく

 

【3】冷凍対応のために今日から始められる“現実的な対策”5選

✅ 「家庭用急速冷凍庫」の導入からスタート

  • まずは10〜20万円台の小型ショックフリーザーや業務用ストッカーでOK

  • 焼豚・ハンバーグ・メンチカツなど、“惣菜冷凍”から開始が現実的

 

✅ 「商品別 冷凍耐性チェックリスト」を作成

  • どの商品が「冷凍→解凍後に味が落ちにくいか」をスタッフの試食テストで可視化

  • 一覧化しておけば、今後の冷凍商品開発がスムーズに

 

✅ 真空包装機 or 簡易機材の導入

  • 肉の冷凍では真空度が品質に直結。まずは「卓上型」や「チャック袋+脱気器」など初期投資5万円前後の簡易機器でOK

  • “冷凍肉=鮮度落ち”のイメージを覆す鍵は「見た目の美しさとパッケージの安心感」

✅ 冷凍商品の販売先を「店頭」から始める

  • いきなり通販ではなく、まずは店頭で“冷凍棚”をつくって商品を試験販売

  • 「冷凍なのに旨い!」という体験を既存客に届け、口コミで広げる

【4】冷凍対応ができる精肉店だけが“全国対応”できる

将来的に:

  • 百貨店の物産展出店

  • 楽天・Amazon・ふるさと納税掲載

  • 海外輸出(冷凍のみ)

などのチャンスはすべて、「冷凍対応できるかどうか」にかかっています。

もう待ったなしです。今年を変革元年にしましょう。

✅ 冷凍は「品質劣化」ではなく「保存技術」である

✅ 手間も投資も「最初の一歩」から始められる

✅ まずは1品から、冷凍惣菜を売ってみることが第一歩

冷凍対応は、**町の精肉店が商圏を超えて選ばれるブランドになるための“扉”**です。

「地元だけの肉屋」から、「全国に贈れる肉屋」へ。変革はここから始まります。

吉田 圭良

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