2025.03.12UP
【精肉店の勝ち残り戦略】「原価」を正しく理解していますか?|食肉業界専門経営コンサルタントのブログ(2025.03.12)
目次
精肉店の未来は明るい!ただし時流への適応努力が必要!
先日とある精肉店様での経営会議にて、社員の1人から「粗利ってなにかよくわからなくなってきた」という声がでました。
よくよく話を聞いてみると、
「粗利=売上高ー原価」であることは当然ご理解されていましたが、
「原価」について、ある種のズレが生じていることがわかったのです。
普段「原価」と一言で言っている数字にも実は、
①「理論原価」と「実原価」がある
②これらは一致しない事がほとんどである
③正しい利益改善活動のためには「理論原価」と「実原価」の差を把握するべきである(どちらか一方だけを知っておけばよいのではない)
しっかり原価を把握することが、お店の利益を確保するカギ になるのは明らかです。
今日は、「理論原価」と「実原価」の違い、そして 適切な原価管理の方法 を、できるだけ簡単に説明します。
「理論原価」と「実原価」の違いって何?
原価には大きく分けて 「理論原価」 と 「実原価」 の2種類があります。
理論原価(計算上の原価)
理論原価とは、 「売上 − 材料費」 で計算されるものです。
たとえば、
- 1個500円のステーキ肉を10個売った場合の売上 → 5,000円
- その肉の仕入れ値(1個300円) → 3,000円
- 理論原価 = 5,000円 − 3,000円 = 2,000円(粗利益)
これはあくまで 計算上の利益 です。実際の経営では、この通りにならないことが多いですね。
実原価(本当の原価)
実原価は、 「売上 −(仕入れ高 + 期首棚卸高 − 期末棚卸高)」 で求めます。
簡単に言うと、 「仕入れた肉の合計」 から、「売れ残った肉の分を引いたもの」 が、実際に使った原価になるということです。
たとえば、
- 1か月の仕入れ総額 → 50万円
- 月初の在庫(冷蔵庫にある肉) → 10万円
- 月末の在庫(まだ売れていない肉) → 15万円
- 実際に売上に使った肉の原価 → 50万円 + 10万円 − 15万円 = 45万円
つまり、 在庫の増減を考えないと、本当の原価はわからない ということです。
ケーススタディ:実原価と理論原価が異なる場合
実際の経営では、「理論原価」と「実原価」がピッタリ一致することはほとんどありません。そのズレが生じる理由を、 「実原価 > 理論原価」 のパターンと 「実原価 < 理論原価」 のパターンに分けて解説します。
実原価 > 理論原価 のパターン(利益が少なくなるケース)
このパターンの原因 は、 ロス(無駄)が多いことや、仕入れ価格が上がっていること です。
ケース1:廃棄が多い
たとえば、
- 仕入れた肉の一部が 期限切れで廃棄 になった
- 商品の カットミス で歩留まり(使える部分)が減った
- ロス管理が甘く 無駄が発生している
こうした場合、 売上にはなっていないのに原価としてはカウントされる ため、実原価が高くなります。
ケース2:仕入れ価格の上昇
たとえば、
- 仕入れ価格が急に上がった (例:和牛の価格が上昇)
- 仕入れ業者を変えたら 単価が上がった
- 輸送コストの増加 で仕入れ額が増えた
このように、仕入れた時点では気づかなかったコスト増加 が影響し、実原価が理論原価より高くなることがあります。
対策
- ロスを減らす工夫(売れ残りは総菜に回す、歩留まりを改善する)
- 仕入れ価格を交渉する(安定供給できるルートを確保)
- 原価の定期チェックを行う(仕入れ・販売・在庫の見直しを毎月行う)
実原価 < 理論原価 のパターン(利益が増えるケース)
このパターンは 棚卸しの影響や仕入れコストの削減 によって、実際の原価が理論原価より低くなる場合です。
ケース1:仕入れた肉が売れ残り、在庫として残った
たとえば、
- 仕入れた肉の一部が 翌月に持ち越された
- 仕入れを減らしたのに売上が伸びた
- 歩留まりが向上 し、使える部分が増えた
この場合、月末の在庫が増えているため、実際に使った原価は少なくなる ので、実原価が理論原価より低くなります。
ケース2:仕入れコストの削減
たとえば、
- 仕入れ業者を変更し、安いルートを確保した
- まとめ買いの割引で、仕入れ単価を下げた
- 輸送コストを見直し て削減した
このように、実際にかかったコストを抑える工夫ができた場合 は、実原価が理論原価より低くなります。
対策
- 在庫を適正に管理(売れ残りを減らし、適正な仕入れをする)
- 歩留まり向上を意識する(加工技術の改善、無駄を減らす)
- 仕入れルートの見直しを定期的に行う
適切な原価管理の方法
原価管理の基本は 「実際に使った原価」を正確に把握すること です。
そのために、以下の3つを意識しましょう。
仕入れと販売を記録する
- 毎日の仕入れ額を記録する。
- 販売価格と売上をチェックする。
在庫を定期的に確認する
- 月初・月末で冷蔵庫の在庫を確認する。
- 売れ残りが多い場合は、仕入れすぎに注意する。
ロス(無駄)を減らす
- 売れ残った肉の使い道を考える。(ひき肉にする、総菜に回す など)
- 廃棄を減らし、ロスを最小限にする。
「もう待ったなしです。今年を変革元年にしましょう。」
原価をしっかり管理すれば、 利益が増え、経営が安定します。
まずは 「仕入れ」「売上」「在庫」 の3つをしっかり記録することから始めましょう!
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