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【精肉店の勝ち残り戦略】精肉店の「陳列戦略」とは、商品の話だけではない!|食肉業界専門経営コンサルタントのブログ(2025.03.04)
目次
精肉店の未来は明るい!成長の機運を捉えよう!
近年、精肉店への関心は確実に高まっています。インターネットでの「精肉店」の検索回数は、2020年比で5倍以上、2023年対比でも213.5%増加し、年間10,981,000回もの検索が行われています。また、家庭での肉類支出額も堅調に推移し、「肉食化」の流れは今後も続くと考えられます。
出典:総務省統計局家計調査よりリライズコンサルティング(株)食肉業界経営支援チームにて作成
出典:Googleキーワードツールよりリライズコンサルティング(株)食肉業界経営支援チームにて作成
「肉食化」の流れが持続的に成長していくであろうことは、「代替肉」という存在が出てきていることからも明らかですね。
我々はもう、万が一にもそれが「畜肉」ではなくなってしまったとしても「肉」からは逃れられない食文化を歩んでいます。
そうした消費者の根源的ニーズを支える食肉専門店としての精肉店の存在価値は高く、今後も多種多様なニーズの出現とともに発展していくことで継続的な成長を目指すことができるでしょう。
この追い風を活かし精肉店がさらに成長するためには、量販店との差別化が不可欠です。
特に、売り場の「陳列」は、お客様に店の価値を伝える重要なポイントです。
本日は、量販店に負けない精肉店の陳列戦略についてお話しします。
「陳列戦略」とは、商品の話だけではない!
精肉店(専門店)の本質的価値である「ライブ感+楽しさ+ここでしか得られない特別感」の3つを最大化するための、「店頭スタッフのシフト組や育成」も含めた総合陳列戦略を考えよう。
精肉店が量販店と差別化し、独自の強みを発揮することが重要です。そのカギとなるのが、「ライブ感」「選ぶ楽しさ」「ここでしか買えない特別感」 の3つです。本日は、この3つを軸に、精肉店の魅力を最大限に引き出す陳列戦略をお伝えします。
1. 「ライブ感」を演出し、購買意欲を高める
量販店では、パック詰めされた商品が並び、一定の規格で売られています。
しかし精肉店の最大の魅力は、「対話をしながら買える」「目の前で肉を切る」といった「ライブ感」にあります。
✅ ショーケースを「舞台」にする
・お肉が美しく並んでいるだけでなく、職人がカットする様子が見える売り場づくりを意識する。
・カットの工程を見せることで、「新鮮な肉を扱っている」安心感を与える。
・塊肉を陳列し、お客様(観客)に非日常感を与える
✅ 店員とのコミュニケーションを促す
・「今日はどんな料理を作る予定ですか?」と声をかけ、肉の種類や厚さを提案する。
・スーパーにはない、「プロのアドバイスがもらえる店」としての価値を提供する。
・自分だけの判断や選択肢では選ばなかったような「第三者からの提案がもらえる店」として買い物の楽しさを提供する。
2. 「楽しさ」を最大限に引き出す
量販店では、決められた量のパックを取るだけですが、精肉店では「楽しさ」を提供することができます。
この点については多くの精肉店が必要性を感じ、それぞれに取り組みを行っている事でしょう。
我々が精肉店を100店舗以上訪ねた中で発見された主な取り組みとしては、下記のようなものがありました。
✅ オーダーカットで「お客様の好みに合わせる」
・「厚切りできます!」「薄切り対応OK!」と、自由度を打ち出す。
・「ステーキ用」「しゃぶしゃぶ用」など、用途に合わせたカット方法をPOPで説明。
✅ 希少部位を目立たせ、選ぶワクワク感を演出
・「本日のおすすめ希少部位」「○○限定入荷!」と、特別感を演出。
・「今日はこの部位が美味しいですよ!」と、店員からのおすすめをPOPにする。
✅ 「〇〇グラムからOK!」で柔軟な購入を可能にする
・スーパーでは買えない少量販売や量り売りを強化し、ニーズに対応。
・「ちょっとだけ試したい」というお客様にも優しい売り場づくり。
⭐ ただし、「選ぶ楽しさ」が「選ぶ苦痛」にならないようにする事もとても大切!
たとえばあなたが釣りの素人であるとして、釣具店に行って「わからない言葉だらけ」「気軽に質問できそうな店員さんがいない」などの環境だとしたら、「楽しく選ぶ」ことはできるでしょうか?
きっと多くの人は疲れ果てて何も買わずに店を出る、ということになるでしょうね。
牛肉の銘柄は400種を越え、部位は40を超えています。
これが豚・鶏・ジビエ・・・などと幅を持ったとき、いったい誰が自分にとっての最善の選択を出来るのでしょうか?
多くの精肉店を巡った結果わかったことは、ほとんどの店が「選ぶ楽しさ」を提供しているつもりでいて、実は「選ぶ苦痛」を与えてしまっているのです。
ビジネスを強化する手法は、ライフサイクルによって変化します。
精肉店というビジネスモデルは基本的には安定期にあるビジネスですから、下図に示すような、「顧客との関係作り」が必須ですね。
精肉店の時流適応とは、こうした安定期の商売としてやるべきことを徹底して行う、という事です。
すなわち陳列においては、
✅ (お肉の)素人であるお客様が選びやすい工夫を施す
✅ お客様との対話をする(または役割付けをする)
という事がとても重要なのです。
3. 「ここでしか得られない特別感」を打ち出す
「特別な肉」「専門店ならではの商品」があることで、お客様は「この店で買いたい」と思うようになりますね。
この点についても上記と同じく多くの精肉店が必要性を感じ、それぞれに取り組みを行っている事でしょう。
我々が精肉店を100店舗以上訪ねた中で発見された主な取り組みとしては、下記のようなものがありました。
✅ 産地・生産者情報をしっかり伝える
・「○○牧場直送」「A5ランク○○牛使用」など、こだわりを明記。
・生産者の写真やコメントを掲示し、ストーリー性を持たせる。
✅ ここだけの限定商品を展開
・「店主厳選!プレミアム焼肉セット」「数量限定!希少部位食べ比べ」など、スーパーでは買えない特別感をアピール。
・特定の曜日限定で、「特売」や「特別メニュー」を展開し、来店動機を作る。
✅ プレミアム体験を提供する
・スーパーではできない「試食販売」で、実際に味を知ってもらう。
・「〇〇円以上お買い上げで特製タレプレゼント」など、ちょっとした特典で特別感を演出。
しかしここでも同様に、
ここでしか買えない、という「差別化ポイント」が「わかりにくさ」「選びにくさ」「単なる安売り」にならないようにする事がとても大切
です。
実はここでも、本来最も大切なことは、
✅ お肉の素人であるお客様が選びやすい工夫を施す
✅ お客様との対話をする(ここでしか会えない人、ここでしか聞けないこと)
なのです。
精肉店(専門店)の価値を高め、お客様に選ばれる方法まとめ
ここまでの内容で量販店に負けない精肉店の陳列戦略を整理すると、
・精肉店とはお客様が素晴らしい買い物体験をするための舞台である
・素晴らしい舞台には、素晴らしい小道具(肉)と役者(店員)が必要である
・これらを揃えておくことで、観客(お客様)に「ライブ感+楽しさ+ここでしか得られない特別感」の3つを提供するべきである
という事になります。
ほとんどの精肉店が「陳列戦略」というと「商品(小道具)」のことばかり考えてしまっているでしょう。
しかし「買う物」も「買う場所」も十分すぎるほど存在している商圏においてユーザーが最も重視するのは「誰から買うか」です。
「店頭スタッフ」のシフト組や育成も含めて、大切な量販店との差別化をするための陳列戦略であるという事を改めて念頭に置き、
自店の在り方を見直してみてはいかがでしょうか。
もう待ったなしです。今年を変革元年にしましょう。
精肉店の未来は、確実に広がっています。しかし、ただ待っているだけでは、量販店との差別化は難しくなります。
「ライブ感」「楽しさ」「ここでしか得られない特別感」を意識した、人も含めた売り場づくりを実践し、
お客様に「また来たい」と思ってもらえる店を目指しましょう。
次回は「惣菜の陳列とスーパーとの差別化」についてお届けしますので、お楽しみに!
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リライズコンサルティング株式会社
コンサルティング事業部
食肉業界支援チーム
チームリーダー/シニア経営コンサルタント
吉田 圭良 Keisuke Yoshida
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