創業70余年のカステラの名店。コロナ禍による店舗来客数の減少に直面する。
「創業者である祖父の赤木康夫は小学校を卒業した後、東京へ丁稚奉公に上がった苦労人。学問好きのアイディアマンであり常に実践の人であった祖父は、甘いものが好物で食べ物に対する思い入れもとても強かったそうです」と語るのは、代表取締役副社長の赤木直子氏。
創業当時、心斎橋周辺は多くの高級店や企業が軒を連ね、高級品だったカステラは贈答品として人気を博した。
「美味しくて栄養価の高いカステラを誰でも手軽に食べられるように普及させたいと考えたそうです」と明かしてくれたのが常務取締役・赤木康人氏。今も社に受け継がれている社是に「学問も原料」、「絶世の品質」、「経済味覚」という創業者の言葉が残っている。
カステラを広く届けるために、自社工場にて「紙の缶詰」という独自の包装殺菌技術を開発。当時は稀だった「食品の熱殺菌処理」と「密封包装」に成功し、賞味期限は従来の3日から約3週間へと一気に延びた。これにより計画生産・計画販売が可能となり、廃棄ロスが減少。著しく製造コストが削減されたことから、リーズナブルな価格での提供が実現した。また、ひと塊で売られているのが定番だったカステラを、食べやすいスライスカットの商品にしたのも銀装だ。
こうして銀装のカステラは、厳選した素材による「ふんわり」「あっさり」「きめ細やか」な味が広く愛されるようになり、大阪ブランドの銘品として、長年、不動の地位を築くに至る。
ところがコロナ禍によって状況は一変。2020年、緊急事態宣言が発令され、人が集まる催しは相次いで中止に。主な顧客層であるシニア世代が外出を控えるようになり、店舗への来客が激減した。
厳選された安全・安心な“天恵の素材”から作られるカステラ。
熟練の職人が創業当時の伝統技法にてカステラを
作り続けている。1993年に、食べやすく一切れ一切れずつを個包装したカステラの販売も他社に先駆けて開始。